「どう生きるか」という面で成功しなければ真の成功はあり得ない。
会社は自らとかかわりのある全ての人に対して責任を負う。会社が成功するために努力した全ての人が、そこから生み出された利益の配分を受ける権利がある。
「アメリカンドリーム」とは、有意義な仕事をして、他の人に多くを与える機会を得ること。
「もちろん痛い目に遭ったことはあるさ。でも、信頼に応えようとする人の方がはるかに多いいんだ。」「自分が信頼することで、相手がより信頼に足る人間になる手助けができる。」
人生における成功の真の評価基準は、どれだけ有意義な人間関係を築くことができたかだ。
ほとんどの偉大なリーダーは、社員にふさわしいリーダーになろうと努力した。
決定的なタイミングに全てを捨てて飛び込まなければ、夢を実現できる可能性は低いどころかゼロになる。決定的な影響を与えてくれるのは「出来事」ではなく「人」。
勇気とは、恐れを感じながらも行動する能力。いつでも安全な道に戻れる選択肢を残しておこうとすると、一生選択しないままで終わる。
正しい人材なくして偉大な企業はつくれない。
不安定さはいつまでも続き、破壊は日常的に起こる。たいていの人はそれが起こるまで予見することもできない。バスの重要な座席に、そこにふさわしい人材で埋まっているか。
この人物を重要ポストにとどめているために、他の人材が会社を去りはじめていないか。
重要ポストにつくべき人は、仕事を「業務」ではなく「責任」だと理解している。そして、人々に奉仕する気持ちを持ち、キャリアではなく、部下を大切にする。
お金で間違った人材を正しい人材に変えることはできない。
ブートキャンプの目的:極限状態で、周囲を助けるより自分を優先する人材を排除すること。
私たちが最大限の力を出し切ろうとするのは、仲間をがっかりさせたくないと思うとき。
リーダーシップ・スタイル
偉大な企業への道を阻むのは往々にして無能なリーダーだ。
リーダーのスタイルが効果的なものならば、偉大な企業をつくる強力な推進力となる。
正しい人材を次々と引き寄せ、崇高なミッションに全員を巻き込んでいく力が必要。
リーダーの最も重要な責任
会社共通のビジョンを明確にし、実現に向けて揺るぎない決意と熱心な取り組みを促すこと。
真のリーダーシップ
従わない自由があるにもかかわらず、人々が付いてくること。
- やらなければならないことを見極めるのはリーダーの役目。
- 重要なのは、やらなければいけないことをやらせることではなく、やりたいと思わせること。
- リーダーシップとは、「サイエンス」ではなく、「アート」だ。
リーダーシップスタイル7つの要素
1 誠実さ、2 決断力、3 集中力、4 人間味、5 対人スキル、6 コミュニケーション能力、7 常に前進する姿勢
1 誠実さ
- あなたの会社の職員は、あなたの行動に驚くほど影響を受ける。
- あなたは、理想とする文化のロールモデルにならなければいけない。
- 言行一致、有言実行あるのみ。
第5水準の原則
第1水準:個人的スキル
第2水準:チームワークのスキル
第3水準:管理スキル
第4水準:リーダーシップスキル
第5水準:個人を超越し大義(会社の理念)のために尽くす。謙虚さと不屈の意志。
2 決断力
- リーダーにとってもっとも大切なのは意思決定能力。
- 完璧な情報がなくても(完璧な情報などまずそろわない)決断する。
- 意思決定が上手な人は、たいてい冷静な分析と直感の両方を組み合わせている。
- 何か「嫌な感じ」がするなら、おそらく誤った判断だ。
- 恐れに突き動かされたNOの判断は、直感的判断と混同されやすいから注意が必要。
- 本能的にやらねばならないとわかっていることは、早くやった方が全員のためになる。
- 判断をしないことは往々にして、誤った判断を下すより悪い結果につながる。
- 責任はあなたが引き受け、成果は共有する。
3 集中力
- 一度にひとつずつ:複数になる場合でも、3つを超えない。
- 仕事ではなく時間を管理する:会社で最も不足している資源は、あなたの時間。
- 十分な時間がある人などひとりもいない。→ 優先事項を決める。
4 人間味
- 偉大な企業には、すばらしい人間関係がある。
- どうすれば自分が社員にとって近づきやすい存在になれるか。
- 起きている問題、社員の気持ちを直接確かめる。
- 社員は基本的に正しい判断をすると信頼する。道・模範を示すことが大切。
- ただし、戦略的最重要課題は、あなた自身が直接関与する必要がある。
5 対人スキル
- 偉大な企業をつくるリーダーは、硬軟の使い分けに習熟している。
- フィードバックの重要性:大切に思い、愛情と共感と敬意を抱いていることを伝える。
- ダメなリーダーは批判的フィードバックが多すぎる。
- うまくいっていない社員には、少しばかりの励ましとサポートが必要。
- たいてい周囲はその期待に応えてくれる。平凡な人々でも非凡な成果を出す力がある。
6 コミュニケーション能力
- 有能なリーダーはあらゆる場面でコミュニケーションをとろうとする。
- ビジョンを常に社員の目に入るようにし、常に話題にしよう。
- 重要なのは効果的に伝えることであり、論理的な正確さではない。物語を語ろう。
- 素直に、自分らしく、気取らない形で伝える。わかりやすい単語を選ぼう。
- 質問に答えるときは、「いい質問だ。」と言い添える。
- 社員には意見だけではなく、素直な気持ちを語ってもらおう。
7 常に前進する姿勢
- エネルギーレベルが高く、決して慢心しない。
- スキルを学び、伸ばすことを止めてはならない。日々、昨日より上を目指そう。
- 自分の身体と心と精神を大切にしよう。
- 常に「変化」する。偶然何かを見つけられるのは、動いているときだけだ。
ビジョン
リーダーシップの一番の責任
会社の明確なビジョンを生み出し、社員と共有し、そのビジョンへのコミットメントと精力的な取り組みを促すこと。
ビジョンとは
「コアバリューと理念」「パーパス」「ミッション」3つの要素で成り立つ。
自分が信じる仕事に取り組むとき、意欲は自然と湧いてくる。
しっかり紙に書き出さなければならない。
1. コアバリューと理念
個人にとっての「人生哲学」にあたるもの。
2. パーパス
あなたを導く星:常に実現に向けて努力する目標だが、決して完全には実現しない。
「もう十分だ」と思うことは未来永劫ない。
3. ミッション
- その時々に登っている山:他の会社との違いを明確に示すもの。
- 優れたミッションにはゴールがある。具体的時間軸も存在する。
- 心を揺さぶるある種の情熱が必要。切実に手に入れたいもの。
⭐️ BHAG (Big Hairy Audacious Goal):社運を賭けた大胆な目標
最高レベルのBHAGは、10年から25年のたゆまぬ猛烈な努力の末に実現する。
戦略:毎年見直す。 戦術:常に変化する。
幸運
幸運な出来事とは
- 自分が引き起こしたものではない。
- 重大な結果を引き起こす可能性がある。
- 意外性がある。(実際に起こるまで予想できない。)
- 重要なのは、巡ってきた幸運を「どう活かすか」だ。
- 偉大なリーダーかどうかは、予想外の出来事にどう対処するかで決まる。
- 偉大なリーダーは、自分の優秀さではなく、運に恵まれたおかげと考える。
- 偉大なアイデアのほとんどは計画されたものではない。
戦略
- ビジョンに直結するものでなければならない。
- 会社の強みや固有の能力を活かすものでなければならない。
- 現実的でなければならず、迅速に見直す必要がある。
- 実現のカギを握る人々を参加させるべきだ。
プロセス
- ビジョンの見直し→内部評価→外部評価→重要な意思決定
- 少なくとも年に1回は顧客調査をした方がよい。
- 競合を過小評価しない。競合はどこか。強み・弱みはどうか。明確な違いはあるか。
社会環境と規制環境
政府の動きや決定を的確に予想すれば、大きなチャンスがひらけることがある。
健全な戦略的思考
- どこで大きな賭けに出るか。→ 戦力を集中させる。
- どうやって側面を守るか。→ 破壊的イノベーションへの迅速な対応
- どのように勝利から最大の成果を引き出すか。→ 執拗に努力し続けることが必要。
- 嵐が来た時に乗り切れるかは、嵐が来る前に何をしていたかで決まる。
- 自分達は安泰だという意識は、大惨事につながりかねない。
- 社員が意思決定の自由と楽しさを感じられる。
- 価格をコントロールできないなら、コストをコントロールしなければならない。
イノベーション
どうやって身の回りにあふれているクリエイティビティを拾い上げ、行動に移し、イノベーションに変えるか。
1) どこで生まれたアイデアでも受け入れる力
- イノベーティブな企業はアイデアを受け入れる力が高い。
- アイデアに対して何らかのアクションを起こす。
- 社外で生み出されたアイデアも徹底的に活用する。
- 別の業界で尊敬されている企業と組んで、新しいアイデアに触れる機会をつくる。
- 学術誌・出版物を定期購読する。
- 顧客からアイデアが寄せられる仕掛けをつくる。
2) 自ら顧客になる
自ら顧客となり、自分自身を満足させるもの・サービスをつくる。
シロアリ効果
自身の問題を解決することで、同じ問題を抱えていた人々がぞろぞろ現れる。
3) 実験と失敗
- 重要なのは実験することだ。成功するのは10〜20%に過ぎない。
- 失敗を繰り返した結果、致命的な失敗を避けることができたのだ。
- 「とにかくやってみよう。」
- 簡単に打ち切ることもできるようにしておかなければいけない。
- 最悪の失敗とは、同じ失敗を何度も繰り返すこと。
- 社員は、好きなだけ粘ることができる。
4) 社員がクリエイティブになる
- クリエイティブになる能力は誰にでも備わっている。
- 「そんなアイデアはくだらない」と絶対に言わない。
- 全員に発言の機会を与える。社員の気持ちをリスペクトし、後押しする。
- 「企業が最高の成果を求めるなら、普通じゃない人が居心地の良い環境をつくる。」
- 予備知識のない人材を採用する。
- デザイナーを採用する。デザインが差別化の決定的要因になることが多くある。
5) 自律性と分権化
社員の自由を認め、彼らの想像力と創造性を活かす。= 信頼・勇気
グループに分け、企業の進化における過程の官僚主義・集権的管理主義を防ぐ。
6) 報酬
- 出世の道が管理職になることだけでは、イノベーティブな企業であり続けられない。
- クリエイティブな成果に対し、個別の報酬、表彰や名誉を与える。
- 管理職を希望しない社員には、別のキャリアパスを用意する。(トップクラスの管理職と同等の報酬)
- 真にクリエイティブな人材は息抜きや、楽な仕事には基本的には魅力を感じない。
卓越した戦術の遂行
素晴らしいコンセプト+質の低い戦術の遂行=死
締め切りを設定
- 誰も守れない締め切りは、設定しないのと同じ。
- まず相手に締め切りを提案させ、話し合い、現実的な期日を決定する。
- 一度決定したら、一才曖昧さを残さない。
- 締め切りを守らないという選択肢はないという組織文化を醸成する。
ANDの才能
規律の文化 + 起業家精神:締め切りはこれを実現する強力な仕組み。
ビジョン + 戦略 → 戦術へ
ビジョン、戦略、今年の戦略的優先事項の書かれた紙を常に目に入る場所に置く。
マイルストーン管理
戦略的優先事項を「ひと口サイズ」(中間目標、重要な節目)に分割すること。
それぞれのマイルストーンに具体的な期日を設定する。
SMaC
Specific Methodical and Consistent:細部にこだわり、着実で、一貫性がある。
一貫してハイレベルで戦術を遂行する
- 揺るぎない一貫性を生み出す、具体的で再現可能なプロセスとメカニズム
- 悲惨な失敗を防ぐ、確認と照合の仕組み
- ありとあらゆる不測の事態を想定し備える綿密な思考
- SMaCプロセスの「理由」の理解にもとづく継続的進化
AAR(After-Action Review)
事後の振り返り:任務完了の度に、起きたことを議論し、振り返り、学習する時間を設ける。
社員が一貫してハイレベルで戦術を遂行する環境を生み出す
生産性が低い原因の大部分は、システムにあり、労働者の力が及ばない部分である。
社員が任務を遂行できないのは、社員の落ち度ではない。経営者の落ち度だ!
社員が任務をきちんと遂行するための基本条件
- やることが明確である。
- 仕事に適したスキルがある。
- 自由とサポートを与えられる。
- 努力を認められる。
- 自分の仕事の重要性を理解する。
人を英雄的行為に駆り立てる動機は何か。
→ 仲間が自分を頼りにしており、がっかりさせるわけにはいかない、という思い。
人は誰でも機会を与えられれば、それに応えようとする。
継続的改善:戦術的BHAG 6ステップ
1) 採用
優れた人材採用には、相当な時間を投資する必要がある。
価値観の合う人材:他者を助けるのが好きな人材
2) 文化を植え付ける
- 教育の実施がが早い段階で必要:コアバリューをしっかり伝える。
- 新入社員に「スターターキット」を渡し、必ず読むように念を押す。
- 経営者は自身の言葉で書いて伝える。
- 新入社員と会社の理念について語り合う。バリューを教えるセミナー開催。「バディ制度」を取り入れる。
3) 研修
業務に必要な具体的な技能の訓練(電話対応、介護知識、介護の基本スキル)
方法:書面、動画、外部研修、独自の講座開設
4) 目標設定
独自(個々人)の厳密な目標設定=具体的な目標
5) 測定
成果の測定。
仕事を最高のゲームにしてしまう。
6) 評価
- 周囲からの評価。
- 経営者からの評価:年間を通じて感謝の気持ちを伝えるべき。「あなたは重要だ。」「あなたに感謝している。」
- 金銭的な報酬。
「全て社長から始まっている。みんなが私を大切に思ってくれていることがわかる。ありがとうの言葉。会社が私の気持ちを大切にしてくれる。」
社内のリーダーはあなたのスタイルに影響を受ける。
ジム・コリンズ(Jim Collins)
『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年にはフォーブス誌の『現代の経営学者100人』にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意思で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)。